2009年6月22日 筆者 多田千香子
訪れた村のレストラン「ロストホフ」
アルザス名物タルト・フランベ。4人で4枚食べた
じゃがいもだんご入りサラダ
肉だんごのアルザス流パスタ添え
黒い実のタルト。日本サイズの3倍=いずれも仏東部ストラスブール近郊の村
中部国際空港から旅立った。12時間後にパリで乗り継ぐ。翼の先に広がるアルザスの空は真っ青だった。うわぁ、目にしみる。仏東部ストラスブール空港でタラップを降りる。少し肌寒いのが心地いい。蒸し暑くなった京都から来たせいか。
「お久しぶりです!」。アキコさんがフランス人の夫ルークとともに出迎えてくれた。うわぁ、会えたんだ。話したいことが山のようにあって、どれから始めていいのやら。「ちょっとスーツケース、軽すぎません?」テキパキとした彼女に突っ込まれた。そう、ほとんどカラだった。アルザスのおいしいもの、たくさん詰めて帰ろうとやってきたんだもの。
パリ住人時代に知り合った彼女から、2年ぶりに連絡があったのが年明けだった。彼女が生まれ育った京都で、夫の夢のレストランを開きたい。計画を応援しようとアルザス料理店プロジェクト勝手連を立ち上げた。私は「アルザスくのいち」として4カ月、碁盤の目を駆けた。アキコ影武者とばかりライバルになりそうな仏料理店を食べ歩く。それとなくメニューを調べ、しつらいをチェックする。「大丈夫、ここは私たちの敵ではございません」。メールで報告した。ジョギング中も「空物件」のチェックは怠らない。看板を見かける。「アルザスセンサー」がピピッと反応する。立ち止まってバックする。「ココ、アキコさんにどうだろう…」。周りの環境もきょろきょろ探りながら写真を撮った。
あっというまに話は進んだ。レストランの元手にするパリの住まいが売れたおかげだった。わぁ、早い。夫妻の熱意が通じたみたい。計画は前倒しになった。彼女は足かけ10年になる滞欧生活に終止符を打ち、まもなく帰国する。いまは夫の実家があるストラスブールで、仕入れや出発準備に追われていた。忙しいところに勝手連ドイツ支部長・ドレスデン在住のマリコさんと押しかけたのだった。
まずはストラスブール近郊の村のレストランに案内してくれた。店名は「ロストホフ」といった。やっぱりドイツ風だなぁ。アルザス特有の木骨組みで、とても大きいお屋敷だった。「かわいいー」。芸もなく叫んでしまう。「アルザスって、どんな小さな村にもたいてい、こんなレストランがあるんですよ」。アキコさんが説明してくれた。
メニューとにらめっこする。もちろんアルザス名物ざんまいに。まずはタルトフランベをいただこう。薄いピザ生地にたっぷりのフロマージュ・ブランという生チーズをのせ、玉ねぎと細切りベーコンを散らす。300度でさっと焼くのだそうだ。薄い板にのせられ、アツアツの長方形がやってきた。うわぁ、大きい。30センチはゆうに超える。ルークが4等分してくれた。アルザス人の大好物という。「お好み焼きみたいな感じかなぁ」と私。「お焼きみたいだね」と長野育ちのマリコさんは、おいしそうに白ワインを飲んだ。現地の人は巻いて食べるのだそうだ。フォークでもいいけれど、手づかみでどうぞ。
よし、私も、くーるくる。ストラスブールやパリでも食べたことがあるけれど、きょうのが一番おいしい。うーん、機内食をガマンしたかいがあった。あっというまに平らげた。もう少しすると、また1枚。さらにまた1枚…。ストップを言うまでは勧められ、どんどん出てくるシステムなのだそうだ。わんこそばみたい。
メーンにはジャガイモダンゴ入りのサラダ「グルムベル・クネップフル」を頼んだ。もちもちしたおイモに甘酸っぱいドレッシングがさわやかで、ちっとも重くない。いくらでも食べられそう。マリコさんの肉ダンゴとアルザス流パスタ「スュペツァル」も横からつつく。なんて素朴、でもぼやけずしっかり味わいがある。これぞ私の好きな「どフレンチ」だわ。ぜひ紹介したい。お高くとまっているフランス料理のイメージを打ち壊したい。デストロイヤー系おフランスかぶれは勝手に熱くなる。
華麗なビジネスウーマン・アキコさんには食欲にあきれられた。「ほんと、よく食べますよねぇ!」それはよく言われます…。ツッコミは私の装いにも及んだ。かばんからのぞいたファンデーションにダメ出しされた。「そのファンデ、ティーンエイジャーですよ!」ええ、そうなんだ。「そのジャージ風ポロシャツも!小学生ですよ…」。すごくお気に入りなのだけれど…。マリコさんになぐさめられた。「私なんて、塗ってもいないから!」。珍道中は続く。
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