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2007年11月12日

 6歳のユウちゃんが私のアトリエに駆け込んできた。母メグミさんと時々、幼稚園帰りに寄ってくれる。京都の町家暮らしの先輩メグミさんは、ちらし寿司やクリをおすそ分けしてくれたり、寒さ対策を教えてくれたり。ユウちゃんは庭のイモムシ発見名人であり、大切な私のお菓子の味見係でもある。リトマス試験紙みたいに正直で、おいしければニッコリ。お気に召さないと知らん顔だから。



ユウちゃんの掘ったおイモで作ったうず巻きクッキー


ココア味がお気に入りのユウちゃん

 「これどうぞ」。袋にサツマイモが入っていた。園でイモ掘りをしたらしい。うれしい。子どものころは祖父母の畑から引っこ抜いたのがおやつだった。留学したパリでも焼きイモ恋しさに、下町ベルヴィルを探し歩いた。土だらけの3本、ふかして食べよう。

 しまおうとしたら、ユウちゃんが何か言いたげだ。おイモでお菓子を作って欲しいらしい。焼いたり、ふかしたりしただけのおイモさんが一番、おいしいよ。そういうと首を横に振った。「そんなの普通やん。おもしろくない」。「あのね、おイモのクッキーとかがいい」。

 クッキーかぁ。ユウちゃんはカリカリしたのが好きだからな。特に芋けんぴ。友人マユさんの個展の差し入れだったのを、あっというまに食べていた。マユさん手製のおいしいパンは、ひとかじりしただけだったのに。マユさんは「芋けんぴに負けた…」と悔しそうだった。

 イモのクッキー、どうやって作ろう。生地に混ぜ込むとイモの味が弱そうだし、イモを挟むとクッキーがポロポロ崩れそうだ。巻き寿司みたいに巻いてみたらどうだろう。100円ショップのセイロでイモを蒸してスプーンでつぶす。ハチミツと牛乳を少し混ぜる。いつものヴァニラ味とココア味の生地に、イモペーストをうすく伸ばして巻く。端っこから切って焼けば、うず巻きイモクッキーになった。

 ユウちゃんは幼稚園帰りにやってきた。ユウちゃんのおイモで作ったクッキー、できたよ。勧めると、両手で1枚を大事そうに持って口に運んだ。「おいしい!」とニッコリした。でも頭の中はハテナだらけになったようだ。「真ん中のがオイモなん?」「どうやって作るの?」。おイモをつぶして、こうやって…とハンドタオルをクルクル巻いてみせる。「おイモ、そのまま入れたの?」ううん、ふかしてから、というと、「ふかす」という意味が分からないようだった。トドメは「チカコサン、なんでいっつも、お菓子作ってるん?」。お店でもないのに人がたくさんいて、いつも私はお菓子を焼いているのが不思議なようだ。言葉に詰まる。それは…、好きだから。

 やわらかいイモペーストと硬いサブレの食感は、その場の大人4人にも好評だった。メグミさんは「サブレ生地の塩気とイモがよくあう」と言った。

 メグミさんは毛虫が庭から消えたら、イチゴの苗をあげるといってくれている。じゃあユウちゃんの次のリクエストは、イチゴのクッキーかな。これこそ難しいお題かも。そのまま食べたほうがおいしいよ、とまずは言おう…。


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