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2008年01月07日

■データ駆使 量を増減



次々と竹の皮に包まれるあんころ。表示には「生ものにつき当日御召し上がり下さい」と明記されている=白山市成町で


  

 「大和香林坊店ですが、まもなく完売しそうです」

 白山市成町の「圓八」本店。午後4時すぎになると県内16の販売店から、名物「あんころ」の在庫状況報告で事務所の電話が鳴り続ける。消費期限は「当日中」。売れ残りは廃棄されるだけに、いかに残品を減らすかが勝負どころだ。

    ◇

 餅をあんでくるんだ「あんころ」は、売り上げの9割以上を占める主力商品。九つ入りの竹包みが1日1000~2000個作られる。日々の生産量は過去3年の販売データを元に天候や祝日などを見極めて決める。6~7割を朝のうちに作り、残りは売れ行きで対応する。

 年末の27日午後5時、北陸自動車道徳光パーキングエリアから連絡を受けて作った30個は、30分後には店頭に並んでいた。

 販売店網は工場から車で20分以内の小松市から金沢市までに限定している。瞬間冷凍させたものは冷凍宅配便で全国発送するが、「店頭販売は管理の目が届かなくなる。これ以上は拡大できない」と11代目の村山圓八さん(60)は話す。

 早いときは午前2時に工場のボイラーに火をつけ、餅やあん作りが始まる。独自の「蒸しあん」は、通常の炊くものと比べてあんの粒子が分解せずに砂糖とよく絡み、さらっとした舌触り。効率も日持ちも悪いが「品のいい特徴ある甘みを出すにはこれしかない」。

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 「赤福」(三重県伊勢市)の製造日偽装が発覚した昨年10月、外見や創業250年以上の歴史という共通点から「ひょっとして圓八でも」と頭をよぎった県内の甘党は少なくない。事実、「赤福偽装」の後、本店に訪れた常連客からは「お宅んとこは大丈夫やろね」と念を押す声が親しみを込めて掛けられたという。

 県菓子工業組合石川支部(白山市、野々市町)の支部長でもある村山さんは11月末、白山市の松任産業会館に支部の菓子店主35人を集め、保健所や県の担当者から食品衛生管理法や日本農林規格(JAS)法に適した品質表示を学んだ。

 菓子業界だけの臨時招集は初めて。危機感を持つ店主からは「この原料で作った菓子は、どう表示するのか」などと具体的な質問が飛んだ。

 県食品安全対策室によると「赤福偽装」以降、ほかの支部でも研修会は計4回あり、「ほかの食品業界と比べても多い」という。

 だが12月10日、「うら田」で知られる金沢市の老舗「浦田甘陽堂」の洋菓子店で不適切な品質表示が明るみに出た。同店長は研修会にも参加していたが、「私の勉強不足でした」と頭を下げた。

 県菓子工業組合は数日後、注意喚起文書をファクスで組合員に送付。年明けには金沢、能登、加賀の3地域で再度研修会を開く。本憲彦事務局長は言う。「研修会は組合員の疑問を解消するためだが、偽装をなくすには、一人ひとりの意識に頼るしかない」

 <あんころ>

 1包(9粒)350円。包装は創業以来、あんや餅の水分調整や防腐効果に優れる竹皮を使う。竹ひもで結ぶと一つにまとまって四角くなるが、箱入り(24粒、1010円)と重箱入り(32粒、2450円)なら丸いままで楽しめる。
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