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2008年03月18日

 
       月の歳時記は、今までに出会ったシャトーのオーナーやワイン醸造家の中で際立って素晴らしいと感じた方や、そこで造られるワインをご紹介してきました。造り手編の締めとなる今回は、シャンパーニュ地方に飛んでみます。 




 

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荘厳さすら伝わってくる地下34メートルの『リュイナール』のカーブ

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近代的メゾン『ブルーノ・パイヤール』では発酵もブレンドも熟成もすべて同じフロアで

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(右から)A、B、Cの『プルミエ・キュヴェNV』、コルクにも経年変化が出ています。パイヤール氏はおしゃれな方です!

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2008年1月の講座で試した『ブラン・ド・ブラン』の3種類

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『ブラン・ド・ブランNV』の裏貼りの四角い枠の中にデゴルジュマンの記載があります

 

●ローマ人たちが建材として掘り出した石灰、その石切場の跡がカーブ

 

 シャンパーニュ地方には伝統と歴史あるメゾンが多く、中でもリュイナールやテタンジェのカーブはローマ人たちが住居の建材用に掘り出した石灰の、その石切場の跡地をワインの熟成庫として使っています。リュイナールが所有するカーブ、地下34メートルのところにはプレステージ・シャンパンの『ドン・リュイナール』が静かに眠っています。荘厳な雰囲気で、見学する価値十分です。

 

『テタンジェ』のカーブはリュイナールが所有するカーブを一部購入したものなので、仕切りを隔ててつながっています。ここでもぜいたくなキュヴェ『コント・ド・シャンパーニュ』がひたすら寝ています。

 

●現代的な感覚と特異な才能で台頭したメゾン『ブルーノ・パイヤール』

 

 そのようなシャンパン業界にあって新興メゾンとして台頭し、活躍しているのが今回の主役『ブルーノ・パイヤール』です。

 

 古くからぶどう栽培家兼仲介業を営むファミリーに生まれたパイヤール氏は1975年に家業のシャンパーニュ・ブローカーを継ぎ、1981年には自らのメゾンを興します。

 

 地下にはカーブなどありません。カリフォルニアやオーストラリア、またスペインの新興ワイナリー同様の新しい感覚の近代的な建造物で、1階のフロアに発酵、ブレンド、熟成用の3つの部屋があって、すべて平面で作業ができる仕組みになっています。

 

 2007年3月の訪問時、新樽とステンレスタンクが並んだ部屋でバレルテイスティングが行なわれていました。一緒に試飲させていただいたのですが、味見して感じたのは、ワインの生地の“ピュアさ”でした。

 

 その時、こんなエピソードも。ある日のこと、ひとりの男性が来訪し、無言でシャンパンを片っ端から試飲していったそうです。その人の名はジョエル・ロブション! 三ツ星シェフが認めたシャンパンは、現在、同店のハウス・シャンパンとして愛飲されています。

 

●デゴルジュマンへのこだわりを比較試飲で確かめて

 

 シャンパンを造る工程に“澱(おり)抜き”作業があります。これをフランス語ではデゴルジュマン(※)と言います。常々デゴルジュマンが異なるボトルを飲み比べてみたいと思っていた私は現地でパイヤール氏にお願いして試飲させていただくことができました。

 

 ワインは『ブルーノ・パイヤール・プルミエ・キュヴェ・ブリュットNV』で、ぶどう品種はシャルドネ33%、ピノ・ノワール45%、ピノ・ムニエ22%。糖分添加(ドザ―ジュ)の量は1リットル中8~9グラムです。

 

 Aのボトルは「デゴルジュマン実施が2006年8月」、オレンジの皮やグレープ・フルーツ、赤い実の果実を感じます。Bは「デゴルジュマン実施が2002年8月」、色調は輝きのあるイエロー、花の香りやスパイス系の香りが主体です。そして、最後のボトルCは「デゴルジュマン実施が1999年5月」、色調は黄金色で木の実、ジンジャーブレッドなど熟成を感じさせるニュアンスでした。

 

●デゴルジュマンによって始まる瓶内での変化

 

 ブレンド比率も糖分の添加量もすべて同じシャンパンで、異なるのは「デゴルジュマン」の日付だけ。果実味主体のフレッシュな味わいのAから、フローラルな要素が加わり、複雑味が出てくるB、そして最終的にはナッツやスパイス、ジンジャーのようなニュアンスを感じるCが、とても同一のシャンパンとは思えず、ブラインドで出されたら同じと答えることは不可能だと感じました。「シャンパンは熟成する!」というのが持論のパイヤール氏。そのこともあり、ボトルの裏貼にはその日付を記載しています。

 

 「デゴルジュマンによってボトルの中に入ってきた“微量の酸素”はシャンパンにミステリアスな変化をもたらします。最初の2~3年はフレッシュな果実の香りが中心、3年以上過ぎると今度は果実の香りや花の香りになり、熟したジャム、砂糖漬けのコンフィなどのニュアンスも出てきます。そしてスパイス、ヘーゼルナッツ、ジンジャーブレッド、コーヒーなどの香りへと、瓶の中で日々変化がおきています」とパイヤール氏は語っていました。

 

●カレッジでも『ブルーノ・パイヤール・ブラン・ド・ブランNV』で学習

 

 今年に入り、オープンカレッジのシャンパン講座で早速実践してみました。No.1は『シャルドネ・レゼルヴ・プリヴェ(デゴルジュマンは2004年2月)』、No.2は『ブラン・ド・ブラン・レゼルヴ・プリヴェ(デゴルジュマンは2006年12月)』。そして、もう1本、同じシャルドネ100%の格上クラス、No.3として『ブラン・ド・ブラン1995(デゴルジュマンは2003年5月)』も供出してみました。

 

 No1は以前からストックしておいたものです。No.2、No.3は新規に購入したシャンパンで3本はデゴルジュマン以外、すべて同じ条件。糖分の添加量は1リットル中7~8グラムですし、ぶどう品種はシャルドネ100%です。

 

●シャンパンをより多く飲んでいる人は熟成タイプがお好き?

 

 ボトルにカバーをしたブラインド状態で講座生21人にテイスティングしてもらい、「どれが好みの味か」を聞いてみました。結果、No.1を選んだのが3名、No.2が10名、残り8名はNo.3でした。

 

 講座は2008年1月だったので、No.2は澱抜き後、1年少々の若い味わいのシャンパンといえます。一方、No.1とNo.3は4年以上経過しており、パイヤール氏が述べたように瓶内では確実にいろいろな変化が出ています。

 

 フレッシュさを好む人と、熟成タイプを好む人とにはっきりわかれた形なのですが、講座生の顔ぶれから分析させていただくと、アルコールに強い人、あるいはシャンパンを多く飲んでいる人が、デゴルジュマンの古いほうを好んでいたようです。

 

 生産するすべてのワインに澱抜きを表示している『ブルーノ・パイヤール』は要チェックです。まず、シャンパンを購入したら半年以上飲まないでじっと我慢(笑)。そして、デゴルジュマンの新しいものが入荷してきたら即購入。2種類のシャンパンの香り、味わいをブラインドで比較試飲してみてください。輸入元のミレジムさんに聞けば、入荷中のデゴルジュマンの日付はわかるはず。より充実したシャンパン・ワールドを楽しむために、一度是非トライアルを!

 

※シャンパンのボトル内で自然の気泡を誕生させるために瓶内で2次発酵をさせるが、その時、瓶内に蔗糖(糖分)と酵母を添加して打栓する。瓶内では酵母が糖分に作用し、アルコールと炭酸ガス、澱が生じる。澱は死滅した酵母であり、動瓶作業によって瓶の口元に集められた澱は、人手あるいは冷却凍結によって取り除かれる、その作業。

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