2009年8月19日 筆者 モルディブ共和国・朝比奈正 自宅でリゾートする方法
ところ狭しとアパートがひしめくマレの街。右手奥には海が見える
海岸沿いに建つSさんの住むアパート。大きな窓が海を臨む
Sさん宅の屋上テラスからの眺め。目の前百八十度にひろがる水平線
あちらこちらに置かれているジョーリは老若男女の歓談の場
モルディブといえば、青い海、白い砂浜、さわやかな風にセレブな空間と、世界有数のリゾート地として思い浮かべる方々が多いだろう。しかしリゾートホテルで有名な国とはいえ、国民の大部分は頻繁にリゾートホテルに行っているわけでもなく、ましてや一度も訪れたことがない人々も多い。
再三お伝えしているが、首都のマレは、約2平方キロの広さに10万人以上が住んでいる世界有数の人口過密都市だ。アパートは隣とすき間なくぴっちりと建ち、窓があっても目の前が壁、などということも当たり前。敷地あるところに、その土地のままの形で建てるため、間取りや風通し、動線など考慮されていないのが実情だ。
マレ島の面積の小ささがゆえに家賃高騰を引き起こしているわけだが、小さいということは、少し高さがある6、7階以上にもなれば、容易に景色のどこかしらに海を眺めることが出来る、ということでもある。アパート階下の住民たちに屋上テラスが解放されているところも多く、住民が眺めを肴(さかな)にパーティーなどを催す姿もよく見られる。
Sさんの住むアパートは幸運にも海岸沿いに建っている。各階とも、窓いっぱいにひろがる景色は、空と海のコントラストで映画のように美しい。中でも屋上にあるテラスは格別。百八十度にインド洋が見渡せ、天気の良い日には、イルカが群れを成し時折くるくるとジャンプする姿も見られる。ぷかぷかと浮かぶ海ガメを目にすることもできる。現地の漁船やリゾートホテルのスピードボートなど、様々な船が目の前を横切る。モルディブは豪華客船の寄港地となっていることが多いので、優雅で大きな豪華客船が海の上を揺られていく時もある。海を挟んで見えるのは空港の島なので、各国の航空機が離着陸し、さまざまなデザインの大きなジェット機が大空をたびたび横切る。
「部屋から眺めるこの景色は、本当に疲れを忘れさせてくれますね」とSさん。
そういうわけで、やはり、海沿いやアパート上層階は特に人気物件となっていることが多く、なかなか空きがない。それでもあきらめることなかれ、地上でも、南国の風と戯れる場所も多く作られている。ちょっとしたスペースに「ジョーリ」と呼ばれる、ハンモックのようなロープを編んだイスが、あちらこちらの玄関先やちょっとした空間に置かれている。ジョーリには常に誰かが座り、笑顔で話に花が咲いている。このリラックス空間に落ち着き、ヤシの木の下で風に誘われながら、仲間と、地域の人たちと、優雅にのんびり過ごすことができるのも、南国ならではのリゾート的生活だろう。