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2009年9月1日                                       筆者 京橋玉次郎

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小津安二郎監督もひいき

 

 おやじ、赤提灯とくれば焼き鳥と続くのはよくある方程式。しかし焼き鳥にも、これはこれで結構深いものがあり、味にも値段にも幅がある。その中でここ伊勢廣の焼き鳥は逸品だ。大正10年に創業、以来文士や著名人に愛され銀座・帝劇・ニューオータニにも支店を持つ人気店。知名度の高さにおいては東京屈指だろう。小津安二郎監督もここの焼き鳥をひいきにしたとか。

 焼き鳥がおやじの占有物だったのは一昔前の話。この店も若い女性の姿がめっきり多くなった。おそらくはグルメ雑誌などの影響があるのだろう。細い路地に面し、昭和の香りを濃く残す建物の入り口脇には、待つ人のために数脚の椅子が置いてある。しかし、待つのに椅子にかけている人を見たことがない。なぜか立っている。どうしてだかは知らない。

 

炭火を前に36年

 

 伊勢廣は素材にこだわる。鶏は飼育日数をかけたあぶらの乗った雌だけを使い、塩は社長が産地まで出向いて直接買付け、ネギは品質が安定している千住ネギを専門のネギ業者から仕入れている。炭は灰の出が少ない紀州の姥目樫備長炭。火力が強いので焼き物にいいのだそうだ。

 カウンターに通される。ガラス越しの目の前、並べられた串からモクモクと煙が上がる。焼き続けて36年という店長が、あるものにはカメのタレをつけ、あるものには塩をパラパラとふりかけ再び炭火にかざす。全身の動きは大きくないが、手先は絶え間なく流暢に動いている。

 

程よいレア

 

 本日食したのは5本丼、1800円。丼ではこのほか4本丼1500円、3本1300円(1時過ぎのサービス)というメニューもある。5本の内容は笹身、団子、もも、皮身、レバー。4本丼はレバーが欠ける。どの値段の丼も本数が違うだけで焼き鳥そのものは同じなので、好みと懐具合によって選べばよい。

 わさびが載った笹身にかぶりついてみる。白くこんがり焼けた外側をあざむいて、中ほどは淡いピンク色の程よいレア。柔らかな歯触りとわずかな甘みが舌に心地よい。焼きすぎてはこの味は出まい。「どこで上げるかタイミングが難しいのです」という言葉に納得がゆく。昔はもっとレアがきつかったそうだが、最近は良く焼く傾向にあるという。団子も皮身も程好い焼け加減で加える注文はない。

 

酒は3合まで

 

 大方の飲食店では料理より酒の方が売り上げに貢献すると聞くが、メニューを眺めていたら、「酒は3合まで、ビールは3本まで」と書いてある。寿司屋では酒量を制限する店があるらしいが、焼き鳥では初めてだ。「飲みすぎれば味が分からなくなるから」というのだろう。ふーん、とここは論評抜きで読んでおこう。

 焼き鳥ばかりに注意がゆきそうだが、やや硬めに炊かれたご飯も十分に旨い。丼だとタレにまぎれがちなのが残念なくらいだ。定食は5本(1800円)~9本(3000円)まで1本刻みであり、さらにはフルコース3600円というものもある。もちろん座敷での会合も出来る。

 

【お店データ】

伊勢廣 京橋本店

東京都中央区京橋1-5-4〈地図〉 03-3281-5864

営業:〔平日〕午前11時30分~午後2時、午後4時30分~午後9時 〔土曜〕午後4時30分~午後8時30分 日祝休み

<本日食したランチ>

5本丼 1800円

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