2009年10月30日18時58分

写真:マレーネ・ディートリッヒのブレスレット(1937年頃):マレーネ・ディートリッヒのブレスレット(1937年頃)マレーネ・ディートリッヒのブレスレット(1937年頃)

写真:トンボの妖精のクリップ(1940年代):トンボの妖精のクリップ(1940年代)トンボの妖精のクリップ(1940年代)

写真:枝に宿る雫をイメージした展示風景:枝に宿る雫をイメージした展示風景枝に宿る雫をイメージした展示風景

写真:ジップネックレス(1951年)。ブレスレットとしても使用可能:ジップネックレス(1951年)。ブレスレットとしても使用可能ジップネックレス(1951年)。ブレスレットとしても使用可能

写真:バラの花を描いたヴァニティケース(1926年):バラの花を描いたヴァニティケース(1926年)バラの花を描いたヴァニティケース(1926年)

写真:グレース・ケリー王妃が結婚式で着用したティアラ(1976年):グレース・ケリー王妃が結婚式で着用したティアラ(1976年)グレース・ケリー王妃が結婚式で着用したティアラ(1976年)

写真:日本の庭園を描いたペンダントクリップ(1924年):日本の庭園を描いたペンダントクリップ(1924年)日本の庭園を描いたペンダントクリップ(1924年)

 グレース王妃やマリア・カラスらを魅了したきらめきが一同に――。フランスの高級宝飾店ヴァンクリーフ&アーペル。その100年余の歴史を振り返る展覧会が31日から、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催される。留め金を見せずに宝石を支える技術「ミステリー・セッティング」や、代名詞とも言える草花や蝶など自然をモチーフにした歴史的作品など、約250点を展示する。著名デザイナーが手がけるファンタジックな展示空間を、同社のアーカイブ責任者と歩いた。(アサヒ・コム編集部 柏木友紀)

 展覧会のコンセプトは、「ザ・スプリット・オブ・ビューティー」、つまり美の神髄。会場は「自然」「エレガンス」「冒険」そして「インカネーション(美の化身)」という4つの「スピリット(精神)」に分かれ、独自の舞台空間を作り出している。

 「自然のスピリット」に足を踏み込むと、森に迷い込んだよう。にょきにょき伸びた枝には、雫(しずく)をイメージするバブル(シャボン玉)型のショーケースが宿り、自然をモチーフにしたジュエリーが並ぶ。同社のパリ本店ほか、世界中の一流ホテルやレストランなどの内装を手がけるパトリック・ジュアンによる設計だ。

 ルビーの花びらとダイヤモンドの葉がまばゆい輝きを放つブーケのクリップ(ブローチ)は1937年製。ミステリーセッティングの手法が用いられ、今展示では間近、かつ裏からもその精巧な仕事を眺められる。

 滑らかで自然な曲面を表現するためには、色合いや透明度の近い石を選定しなければならない。そして多くを捨ててカットし、ネット状に張り巡らせた留め具にスライドさせるように石をはめ込む。「一つ入れるのに約5時間、この技術を持つ職人は3人しかいないのです」と、歴史遺産部門の責任者、カトリーヌ・カリユーさんはいう。

 ルビーにエメラルド、ダイヤモンドをちりばめた「トンボの妖精」は、フワフワと空間を漂っているかのような神秘的な作品。今展覧会のラッキーモチーフでもある。カリユーさんは「作品にみな動きがあるのがお分かりになるでしょう。真のジュエリーとは内部に魂を宿らせているのです」と説明する。

 「エレガンス」の部屋では、空間に浮かぶ巨大な葉の上にショーケースが置かれていた。レースやシルクといった生地の質感を細工で表現した作品や、リボンやジッパーをかたどったネックレスなどが並ぶ。

 女性の社会進出が進んだ1930年代には、口紅やアクセサリー、タバコといった小物を入れ込むバニティケースも多く製作された。時計がひそかに組み込まれているのは、「女性が外出先で化粧する必要があるなど社会活動が盛んになる一方、公の場で時計を見るのはまだ非礼なこととされていたため」という。

 「冒険」の空間には、アフリカやインド、日本といった異国の地のデザインをヒントにした作品がずらり。仏舎利や松など日本庭園を描いたクリップや、エジプトの壁画やオダリスクをモチーフにしたブレスレットも。多くは1920年代の作品だ。1922年に王家の谷からツタンカーメンの墓が発見され、一気に冒険熱が高まった時代を反映しているという。

 最後の「インカネーション」の空間もまたゴージャス。同社の宝石をこよなく愛した代表的な女性たちを紹介している。モナコ王妃となったグレース・ケリーが結婚式で付けたティアラ(王冠)や、ジャックリーン・ケネディの炎のクリップ、マリア・カラスの花形クリップ……。映像での案内役は自身も愛用者であるカトリーヌ・ドヌーブ。マレーネ・ディートリッヒがあつらえたブレスレットは、ヒチコック監督の映画「舞台恐怖症」の中で着用。写真も多く残されている。

 現代でも、04年カンヌ映画祭でチャン・ツィーの胸元を飾ったネックレス、07年アカデミー賞でリブ・タイラーが身につけたネックレスにキャメロン・ディアスが付けたブレスレットなど、ハリウッド女優らの輝かしい活躍と一体となったピースが並ぶ。

 驚くのは、歴史あるヴィンテージ品と、現代の作品が見事に調和していること。アンサンブルになるネックレスとクリップ、イヤリングなども、よく見ると制作年代やデザイナーの異なるものもあるが、まるで一対のように感じられる。

 「真の美しさとは何か。この根底に流れる精神を、永続性を持って現代まで受け継いで来たことが、我々の誇りなのです」。今展示品の約3割は個人のコレクターから借用したものだが、いつの時代でも、どこにあっても、ヴァンクリーフ&アーペルと分かるデザインとクオリティーが、その神髄なのだという。

arrow
arrow
    全站熱搜

    rjivoe 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()