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2009年11月10日                               筆者 京橋玉次郎

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米屋が始めたランチ

 

 現役のしかも小さな米屋が始めたランチどころ。店名も妙な細工しないところが印象深い。店を切り盛りしているのは3代目の鈴木さん(38)夫婦と母親、手伝いの女性。作業服に前掛けが良く似合う70歳になる先代は、「いま配達から帰ったよ」、といった風情で時々店をのぞく程度。息子にまかせきっている。

 八丁堀交差点に程近い路地の角地、「美味しいごはんあります」という1本ののぼりが目印。カウンター2席、狭いテーブル12人と至ってこじんまりしている。なんたって米屋の店先で食事が出来るようにしただけだから、造りに多くを期待するのは無理というもの。まずは質素な店内だ。

 

ご飯のうまさは天下一品

 

 店の名に恥じずご飯がうまい。この日は会津の新米だったが、輝くような艶で、丼の中で一粒一粒がスックと存在を主張している。炊き方も申し分なく、このご飯のうまさは、これまで数多く食したランチの中で三指、しかも上位に入る。こんなご飯なら浅漬けの白菜か何かだけでモリモリ食してみたい誘惑に駆られる。

 料理もそのご飯の味を引き立てることを主体に考えている。本日食したまぐろユッケなども、しっかりしたユッケの味付けながらご飯の食感と風味を損なわない。「ご飯お代わり」と叫びたくなったが、最近は勢いで食すと後からこたえるので我慢した。ちなみにお代わりは自由。お代わりをするのは、大方は若い男というのが相場だが、この店では若い女性がお代わりをする姿も珍しくない。

 

飯の味を生かす家庭的料理

 

 小さな地味な店なのに人気は高い。座るには、ピークを外すかある程度の待ちを覚悟するかどちらかだ。来るたびに行列の数が多くなっている。4年ほど前に開店した当初は、朝8時から持ち帰りのおにぎりなども売っていたが、だんだんランチの人気が浸透して忙しくなり、現在は11時からの営業となっている。

 ランチメニューは「日替わりご飯セット」と「焼き魚定食」が880円、「カリー」と「唐揚丼中華風」が780円とリーズナブル。「まぐろユッケ」は限定10食とあったが、この日は運良く残っていた。小ぶりのゴマ豆腐と煮物と漬物が少々ついてきた。いずれも家庭の惣菜風で主役はご飯。そんなランチを目指し、はるばるここ築地の新聞社から出かける“グルメ”もいるらしいが、誰かはわからない。

 

いつか町は変わる

 

 帰りがけ、裏口で所在なさそうにしている先代のおやじさんと目が合い、積み上げられた売り物の米袋の横でしばらく立ち話。バブルの前までは八丁堀界隈も居住する人が多く、一般家庭を相手に商売をしてきたが、「今は・・・」と浮かない表情。食堂はIT系の大企業にいた息子が継いだので「もう口は出さない」。

 確かに私が住む神奈川県の町でも、量販店の品揃えと価格に、市中の米屋は苦戦あるいは全滅している。こうしたときの流れは便利になった面もあるが寂しい面もある。ただ、この鈴木米店に限れば、そのおかげで旨い昼飯が食えるようになったとも言えるのだから、利用者としてはありがたい話ではある。

 

【お店データ】

鈴木米店

東京都中央区八丁堀3-20-8〈地図〉

営業:〔平日〕午前11時~午後4時 土日祝休み

<本日食したランチ>

まぐろユッケ定食 880円

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