close
2008年01月04日23時19分

 08年の東京金融市場は波乱の幕開けとなった。米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題の先行き不安が一層強まり、原油高、円高、株安が再燃している。国内企業からは収益や個人消費への悪影響を心配する声が相次ぎ、「景気の潮目が変わる」との声も出始めた。個人投資家にも損失を抱える人がいる。08年の企業や家計の先行きに影を落とす滑り出しになった。

 「08年は厳しい年になる」(富士通の黒川博昭社長)、「08年上期は経済は相当停滞する。株価は2月までは1万4000円台だろう」(ダイキン工業の井上礼之会長)。仕事始めの4日、企業トップからは先行きに対する厳しい言葉が相次いだ。

 「不安定要因が増しつつある」(JFEホールディングスの数土文夫社長)。サブプライム問題による世界的な信用不安と、原油などの資源価格高騰、米国経済の後退懸念が、企業経営者に重くのしかかる。

 三菱商事の小島順彦社長は「金融市場を通じ、米国経済の動揺が瞬く間に世界経済に波及する可能性があり、様々な下方リスクを見つめる必要がある」と社員に訓示。丸紅の勝俣宣夫社長は「08年は今まで続いてきた世界経済の成長が後退することもありえる。潮目が変わるという認識を持つべきだ」と強調した。

 不安は小売業界にも広がる。百貨店業界は、正月の初売りは全般的に好調だった。ただ、内実は冬物のバーゲンセールの前倒し実施など、利益の「先食い」でしのいだ面が大きい。

 個人消費は依然、低調なままで「楽観できない状況が続いている」(三越の石塚邦雄社長)。頼みの綱は富裕層だが、株安が進めば保有株の価値が下がり、高額商品の買い控えを招きかねない。阪急阪神ホールディングスの角和夫社長は「原油高が消費者心理を冷え込ませ、個人消費が落ち込んで企業の設備投資まで響いてくるという負の連鎖が懸念される」。

 食品や生活用品の値上がりが続く中、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は「70年代後半に経験したスタグフレーション(不況下の物価高騰)の再来の恐れを感じる」と危機感を募らせた。

 慶応大の竹中平蔵教授(元総務相)は4日夕、東京・六本木でのイベントであいさつし、大発会での株価急落を「今の日本が置かれている経済、政治もろもろの状況を象徴しているような今年の始まりだ」と表現した。

 ■投信、国内市場に失望感

 株安は個人の金融資産にも大きな影響を与えている。購入が増えている投資信託のうち、日本株を中心とした「国内株式型」は相場の悪化から含み損が出ているケースも多い。個人投資家の間では、国内型の投信を解約したり購入を手控えたりする一方で、新興国の株式など海外資産で運用する投信に資金を振り向ける動きが強まっている。

 国内株式型の基準価額(分配金込み)は昨年11月末までの1年間で平均4.7%低下。今後、さらに株価が低迷すれば資産が目減りする人は増える。投資信託協会の調べでは、国内株式型の投信は昨年11月の解約・償還額が新規購入額などを516億円上回った。

 一方、海外株中心に運用する投信は昨年11月、新規購入額などが解約・償還額を1800億円近く上回る流入超だ。海外市場では、サブプライム問題で一時的に株価が下がっても経済成長への期待感から再び持ち直しており、基準価額も同11月末までの1年間で19.7%上昇。ロシアやインド、中国など新興国中心に投資する株式投信は50.7%も上昇した。

 個人投資家は現状をどう見ているのか。昨年12月、朝日新聞の無料会員制サービス「アスパラクラブ」の会員で、投信を購入している人に聞いたところ、日本株への失望が強かった。

 東京都の嘱託職員の60代男性は約1000万円の投信の大半が海外の株式や債券で運用する国際型。「海外の方が利益が期待できる。国内株には関心がない」と言う。

 横浜市の会社顧問の60代男性も約2千万円を新興国型と国際債券型に振り分ける。「損失の危険はあるが、ダイナミックに成長している地域にお金を回したい」と話す。

 ただ、海外は国内に比べて経済情勢などの情報を得にくく、過熱気味の相場が一気に冷える危険もある。円高が進めば、海外資産で運用する投信の円換算の価値が目減りする恐れもある。

 「ある程度のリスクは覚悟していたが、こんなに価格が動くとは思わなかった」。アスパラクラブ会員の京都市の30代女性は国際型を保有しているが、急激な相場の変化に驚き、より安定した値動きの投信への振り替えを検討しているという。
arrow
arrow
    全站熱搜

    rjivoe 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()