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2008年02月02日14時28分

 俳優の岡本健一が10日に開幕するこまつ座「人間合格」で、太宰治を演じる。10代の頃から愛読した作家に扮するのも、井上ひさしの作品に出演するのも初めてだ。「ずっと客席から見てきたこまつ座に、ついに出られてうれしい。太宰ファンに真実味を感じてもらえる舞台にしたい」と意欲を燃やす。

 「人間合格」は89年初演の評伝劇。これまで4度上演され、風間杜夫、渡辺いっけい、大高洋夫が太宰の本名の津島修治役を演じてきた。30年に、東京帝大に入り上京した太宰が作家として立ち、戦禍を生き、自殺する48年までを、親友の演劇青年(甲本雅裕)と左翼活動家(山西惇)、津島家の番頭(辻萬長)との関係を軸に描く。

 井上は、太宰の「ロマネスク」「道化の華」といった3人の友情物語の構造を戯曲にとりこんだ。さらに自殺未遂や複雑な女性関係という有名な史実は遠ざけ、太宰の小説の巧みな語り口を意識した、喜劇的なタッチでドラマを運んでいる。

 「井上さんは『君は何もしなくても太宰に似ているから大丈夫』と言ってくれた」と岡本。「でも、舞台に出てこない太宰の人生を埋める作業をしていると、混乱の時代に死に物狂いで生きた作家の姿が迫り、もっと自分を追いつめないとという思いにかられる」

 85年に「男闘呼組」でデビューした岡本は、89年の初舞台「唐版 滝の白糸」(蜷川幸雄演出)がきっかけで舞台を活動の中心に据えた。商業演劇から小劇場まで幅広く出演。所属するジャニーズ事務所では、舞台出演の機会が増えている後輩たちのよき相談相手でもある。

 「僕の場合は、人気も技もある大先輩が泣き、わめき、自己解放しつつ物語に没入するけいこ場の空気にたまらなくひかれた。テレビに出続けて有名になるより、すごい舞台に出て感動を体感したくなった」

 憂いをたたえた二枚目という個性からか、今回の太宰のみならず、石川啄木、竹久夢二、ピカソなど芸術家の役をたびたび演じてきた。「当時の風俗や時代背景を研究して実在の人に近づく役作りをしたうえで、いま、その人を演じることの意味を考える。そこに生身で表現する舞台の二重の面白さがある」

 「大地主の六男坊だった太宰は愛に飢えていたのだと思う。だからこそ、平凡な幸せからあえて外れて生きたのでしょう」。太宰が晩年を過ごした三鷹のけいこ場に通い、39歳を目前に自死した太宰をまったく同じ年で演じることに、不思議な縁を感じている。

 鵜山仁演出。田根楽子、馬渕英俚可が共演。3月16日まで、東京・新宿の紀伊国屋サザンシアター。6300円。電話03・3862・5941(こまつ座)。
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