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2008年02月05日

 「瀕死(ひんし)の状態」ともいわれたパリ・オートクチュール(高級注文服)に回復の兆しが見えてきた。世界中の比較的若い新富裕層が新たな顧客として加わったことや、若手デザイナーが増えたことなどが要因だ。21日から4日間、パリで開かれた08年春夏コレクションは、作品がぐんと若々しく、より現実的になった。



シャネル


ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェ


ジバンシィ


アン・ヴァレリー・アッシュ


クリスチャン・ディオール


ヴァレンティノ

 会場にロシア語が飛び交い、中国のテレビリポーターが速報する。数年前はまず見られなかった光景だ。

 米国や中東だけでなく、ロシアやインド、中国などの新たな富裕層が、買い物の対象としてオートクチュールの情報を求め始めた。地元のフィガロ紙は、この現象をとらえ、「2年前から、オートクチュールの売り上げの伸びは、高級品全体の伸び方の2倍を超えた」などと報じた。パリ・オートクチュール協会のディディエ・グランバック会長は「めざましい復活。入会規則を緩めて若手を勧誘したこと、ネットの普及で顧客が世界に広がったこともその理由」と話す。

 多くのブランドはオートクチュールの服だけで採算は取れないが、「香水や小物類を含めて、ブランドを引っ張る『機関車』」(ディオールのシドニー・トレダノ社長)としての勢いが増しているのは確かだ。

 参加ブランド数は前回より六つ増えて26。新顧客層の好みを反映するかのように、普段の生活で着られるリアルクローズがますます増えた。かつてほど、これみよがしの大げさなデザインではないが、細部の作り込みに、伝統を継ぐ職人技の、繊細な豪華さが宿る。

 筆頭はシャネル。「深海の貝殻」がヒントの丸い肩のジャケットと、ひだがうず巻くスカートは、うっとりするほど柔らかい曲線を描く。それでも時にはおしゃれな仕事着として使えそうだ。平たいバレエシューズが現実味を強調した。

 ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェは、プリーツや刺繍(ししゅう)をふんだんに施してシュールレアリスム風の柄を服に描いた。服全体がひとつのアクセサリーのようだが、大半が着回しの利くツーピースになっている。

 33歳のリカルド・ティッシが手がけるジバンシィの弾むようにたわむミニスカート。新進のアン・ヴァレリー・アッシュが見せたシンプルなドレスの幾何学的な造形からは、若々しさと共に人間の手による仕事の尊さが伝わってくる。

 一方、華やかな色や形でオートクチュール本来の「夢と美」を訴えたのはクリスチャン・ディオールとクリスチャン・ラクロワ。ディオールのドレスは、張り出した腰や背中におびただしい刺繍や大胆なドレープが盛られた。フォルムや細部は普段よりやや大雑把にも感じるが、多彩なスタイルで女性的な優雅さを表す懸命さがうかがえた。

 今回の大きな話題は75歳の大ベテラン、ヴァレンティノ・ガラヴァーニの引退ショーだった。花を思わせる端麗なイタリアンスタイルが並び、多数の著名人を含む800人が別れを惜しんだ。舞台裏のガラヴァーニは、さばさばした口調で「今後は花や犬を育て、社会貢献をするなどして、人生を楽しみたい」。ブランドは若手が引き継ぐ。オートクチュール新時代の象徴ともいえる幕引きだった。

◇写真はすべて大原広和氏撮影
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