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2008年02月27日

 08年秋冬パリコレクション4日目の26日は、朝9時半から夜9時まで14ブランドのショーが立て続けにあった。モデルや観客の移動に伴って、ショー開始が1時間も遅れる「パリ時間」となり、すべて終了したのは午後11時。イタリアの中堅ブランドが多いミラノと違って、パリは様々な国からビッグブランドや個性派の中堅、新進まで多彩な顔ぶれが集まり、作風や方向性が様々なので見逃せないショーが多い。



コムデギャルソン(08~09年秋冬パリコレクション)


ジュンヤ・ワタナベ(08~09年秋冬パリコレクション)


ツモリチサト(08~09年秋冬パリコレクション)

 なかでも日本人デザイナーの個性的なショーは、パリ・コレを充実させる大きな原動力になっている。

 その筆頭は、コムデギャルソンの3ブランドだ。川久保玲が手がけるコムデギャルソンの会場は、場末のキャバレーを思わせる赤いネオン風のライトに照らされた。けばけばしいオレンジや赤のチュールのミニドレスはランジェリーのフリルで飾られ、時に唇やハート形にくりぬかれて、白い下着がだらしなくのぞく。頭にはアニマル柄のフェークファーの帽子。靴にも毒々しいハート柄。東京の渋谷あたりでよく見るゴスロリ(ゴシック・ロリータファッション)調を思わせるスタイルもある。

 とんでもなく下品であくが強い要素を盛り付けているのにもかかわらず、抜群のバランス感覚できれいに可愛らしく見せる。テーマはずばり「バッド・テースト(悪趣味)」。上品だが、個性の乏しい服が主流になる中、確かに常識を超えた悪趣味なスタイルが魅力的に映る。

 ジュンヤ・ワタナベのテーマは「ジオメトリック・スカルプチャー」。円と四角形の布を使って建築的なスカルプチャーフォルムを作った。手法は前衛的だが、デザインはクラシック。楕円形のジャージー地で仕立てたドレスは、ウエストで柔らかくブラウジングされて美しいフォルムを作り、そのまま細く長いスカートへと続く。背中だけマント状に広がるメンズ地のジャケットなどは、円と四角の布だけで作ったとは思えないほど優美なドレープが流れる。かつてこれほどロマンチックなテーラードスーツを見たことがあっただろうか。

 音楽は、映画のサントラ盤のようにドラマチックなG線上のアリア。ヘアデザイナー加茂克也の積み木を重ねて布で包んだヘアが、テーマを鮮やかに象徴した。

 30代の若手、栗原たおが担当するタオ・コムデギャルソンも、叙情的な作品を並べた。主役は、銀紙のようにぱりっとして輝きのあるラメクロス。ふんわりとふくらんだケープ状の上着とミニドレスは、ほつれて糸がふわふわ揺れるニットなど栗原らしいカジュアルな崩しのテクニックで彩られる。テーマは「グリッター・ファンタジー」。マスカラのつけ損ない風に「くもり空」などの言葉を書いたメークも可愛らしい。

 ツモリチサトも、ウィーンの雰囲気やクリムトの絵画からヒントを得たロマンチックなバブルドレスを並べた。淡いオレンジやピンク、花のモチーフが優しい。ドレスの全面に、オーガンディの切れ端や刺しゅうでびっしりと絵のような柄を描いた。

 イッセイ・ミヤケは、プリーツやあたり(着こんでいるうちに自然に表面に出る跡)のシリーズなど同ブランドの素材開発技術を発展させた作品をそろえた。(編集委員・高橋牧子)

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写真は大原広和氏撮影
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