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2009年7月11日                                             ソーシャルブックマーク

写真満開のヒマワリ畑の横を走る姫新線の新型車両。今年3月に導入された=兵庫県佐用町

写真新型車両の臨時列車に乗る、たつの市立小宅小学校の4年生=兵庫県佐用町

写真再利用されることになった本竜野駅の跨線橋の橋脚=兵庫県たつの市

地図 

 「新・かぐや姫伝説」。姫路駅(兵庫県姫路市)と新見駅(岡山県新見市)を結ぶJR姫新(きしん)線の乗客を増やそうというプロジェクト名だ。プロジェクトには、約15の団体・個人が参加、沿線ツアーを企画し、乗客に缶バッジなどのオリジナルグッズを配っている。

 かぐや姫伝説は奈良県や静岡県など全国各地にあるが、実は姫新線の沿線にはない。プロジェクトは、姫路の「姫」や太市(おおいち)駅(姫路市)周辺の特産のタケノコ、兵庫県立西はりま天文台(佐用町)、三日月、上月両駅(同)の「月」などから連想したものだ。考案者の一人、兵庫県立大の福島徹教授(57)は「沿線の観光資源にちなんだ新しい物語をつくりたい」。

 姫新線は全線158.1キロ、非電化で単線。乗客が減少して列車本数が減り、さらに乗客が減るという悪循環に陥っている。このため、姫路―上月間の50.9キロを非電化のまま高速化するJR西日本の事業が決まり、3月に新型車両が導入された。レール改良工事を経て来春から高速運転を始める。事業費80億円のうち、県や沿線自治体が35億円を負担した。

 プロジェクトに取り組む市民グループの一つ、「がんばれ!姫新線」の内海益男さん(74)は「ハード面が整備されるのだから、乗客を増やさなくては。自然豊かな西播磨の良さを味わうには姫新線がうってつけ。日本一のローカル線を目指したい」と力を込める。

■伝説になれ 里山の光景

 JR姫路駅を出発した列車の車窓からは、ビルの間から姫路城が見える。10分もすると車両の両側から竹林が迫ってきた。東觜崎(はしさき)駅(兵庫県たつの市)周辺では、特産の手延べそうめん「揖保乃(いぼの)糸」の工場が並ぶ。さらに水田を縫うように走り、ヒマワリ畑が広がる同県佐用町に入った。県立西はりま天文台がある大撫山(おおなでさん)からは夜、無数の星を見上げられる。

 そんな風景の中を6月下旬、たつの市立小宅(おやけ)小学校の4年生約150人を乗せた臨時列車が走った。同小が07年から取り組んでいる姫新線を学ぶ授業の一環で、児童は3月に導入されたばかりの新型車両に乗り込んだ。

 「緑のトンネルくぐりぬけ そしてパッと広がる ヒマワリと星たちがキラキラしている」。車内では児童の元気な歌声が響いた。児童が作詞した姫新線の応援歌「OK! 行こう」だ。児童が口ずさんだメロディーをもとに教諭が曲をつけた。4年生の担任の片山暁人(あきと)教諭(26)は言う。「この車窓の風景が原風景になって、大きくなってもここに住みたいと思うようになってほしい」

 沿線の龍野実業高校(たつの市)では、デザイン科の3年生が新型車両に掲示する路線図を制作中だ。JR西日本からの依頼。虫や女の子のかわいいキャラクターが沿線の魅力を紹介する16点を準備している。福永悠さん(17)は「列車に乗るのが楽しくなるようなデザインにしたい」と話す。

   ◇

 新型車両は銀色の車体に、赤とんぼと稲穂をイメージしたオレンジ色、黄色の2本のラインが走り、外側のドア横には、一般公募で選ばれた赤とんぼのロゴ(縦横約1メートル)がペイントされている。たつの市出身の詩人、三木露風(1889~1964)が作詞した童謡「赤とんぼ」にちなんだものだ。三木は幼い日のふるさとの風景をつづったとされる。

 たつの市の市山了子さん(73)は64年、大分県佐伯市から姫新線に乗って嫁いできた。「当時はまだ蒸気機関車で、車内は学生や会社員らでにぎわっていた」

 誰も知り合いのいない土地で、不安な毎日が続いたが、童謡「赤とんぼ」を耳にするたびに、ふるさと佐伯市の田んぼに、赤とんぼが飛びかっている風景が思い出され、心が癒やされた。

   ◇

 姫新線は36(昭和11)年の開通以降、山陽と山陰の両地方を結ぶ役割を担っていた。70年以降に中国自動車道が順次開通し、自家用車や観光バスに乗客が移り、89年に急行が廃止。94年には、鳥取県などが出資する第三セクター・智頭(ちず)急行の智頭線が開業し、陰陽連絡網としての役割を失った。

 市山さんは姫新線の現状を憂え、「がんばれ!姫新線」を立ち上げた。沿線・地域の魅力を知ってもらうため、本竜野駅(たつの市)周辺のツアーなどを企画している。「童謡赤とんぼみたいに愛される姫新線にしたい」

(文・向井 大輔 写真・西畑 志朗)

鉄ちゃんの聞きかじり〈97歳 神戸生まれの跨線橋脚〉

 本竜野駅(兵庫県たつの市)は新駅舎を建設中で、これまでの木造駅舎を取り壊した。

 旧駅舎のホームをつなぐ跨線(こせん)橋も解体・廃棄の予定だったが、地域住民らから「古くて価値のあるものだから何とか残して」との声が相次いだ。このため、新駅舎前の広場の案内板に再利用される予定という。

 橋脚部には「I.G.R TAKATORI WORKS 1912」と刻印されている。「I.G.R」は内閣鉄道院のことを示し、1912年に鉄道院の鷹取工場(神戸市)で製造されたとみられている。本竜野駅の開業は31年のため、別の駅から移設されたらしい。

 再利用を要望した一人、同市新宮町の陶芸家、芳野俊通さん(68)は「映画のロケでも使われたといわれ、親しまれてきた。どんな形になっても残れば」。跨線橋は新駅舎が完成する来年3月までは利用できる。

探索コース

 兵庫県佐用町の播磨徳久(とくさ)駅周辺では19日から8月2日まで、「南光ひまわり祭り」が開かれる。ヒマワリ約150万本が時期をずらして咲く。同町の県立西はりま天文台公園へは、佐用駅からタクシーで約10分。三日月駅(同町)から徒歩約15分の「味わいの里三日月」では、「三日月味噌(みそ)」などの特産品が購入できるほか、特産のそばが味わえる。

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