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2009年7月20日                                                       筆者 多田千香子

写真午前6時、フランス東部アルザス地方・ベブレンハイム村で。ブドウ畑の中を走る

写真午前5時半、エッフェル塔を通過

写真午前6時過ぎ、チュイルリー公園で。カモの親子に遭遇

写真午前7時、南仏ミネルヴォワ村で。風車をめざす

写真午後7時、大阪城で。七夕駅伝3キロを走って

 パリの朝は早い。張本人は私だ。午前5時半、ドンドンドーン。靴ひもを結びながら隣の部屋をノックする。「おはようございます」。小声で言いながらナミコさんが出てきた。ばっちりナイキで決めている。15区コメルス通りの宿から走り出す。朝の空気がひんやり心地いい。

 パリ~南仏の旅の友12人中、ジョガーは4人いた。30、40代女性、3人に1人になる。やっぱりジョギング熱が高いかも。東京マラソン(ただし10キロ)で目覚め、まんまとブームに乗っている私が言うのもナンなのだが。

 12人旅になる前のアルザスでは1人で走った。ストラスブールでは大聖堂や旧市街も攻めたが、あとはひたすらブドウ畑だった。掃除機チカコと呼ばれるほど食べたせいで、走らずにはいられない。ワインを飲みすぎて夜はバタンキューなのに、朝5時半になると外に出た。週に1、2回走るようになって1年。最初は2キロだって死にそうだったが、いまでは7~10キロは走っている。だからといってやせたわけでも人生バラ色になりもしていないが…。

 ナミコさんは35歳の誕生日の翌日から走り始めた。初めは1キロも走れなかったのに、1年後の初マラソンで4時間を切って完走した。すごい。来年4月のパリマラソンに出るつもりだから、今回のパリは予行演習も兼ねている。石畳で足踏みして感触を確かめていた。

 パリ最終日は1人で走った。午前6時15分、エッフェル塔の下を通る。前夜のピクニックの食べかすやゴミが落ちて異臭が漂っていた。セーヌ左岸を東に向かう。アンヴァリッド廃兵院、オルセー美術館を通ってコンコルド広場へ抜けた。まだ車も少ないからびゅんびゅん走れる。

 チュイルリー公園を独り占めする。観覧車を左に眺めつつ走る。さあ公園から出よう。あれ、門が閉まっている。ルーヴル美術館前に出られない。えー、入れたのに。

 わきに回ってみる。どこの門も南京錠がかかっている。いまさら引き返したくない。キョロキョロ周りを見渡す。カモの親子の行列しかなかった。よいしょ、よいしょ。1人用ベンチを踏み台に塀をよじ登った。よしジャーンプ。飛び降りたらそそくさと駆け抜ける。脱走しているみたい。

 ポンヌフを渡ってノートルダム寺院へたどり着いた。午前7時を回ったころだった。早起きの観光客が写真を撮っているが静かだ。広場でストレッチして地下鉄に乗る。50分足らずのジョギングは5分で戻ってきた。 あっけない。

 「走るっていいよー」。仲間に勧める。あんまり言うから新興宗教の勧誘みたいになってきた。走らない派には迷惑な話だ。ワイン番長・チアキさんは早起きされるのがこたえたらしい。「南仏では部屋を分けましょう、早起きチームと酒飲みチームと!」

 南仏カルカッソンヌ近郊の村で、ジョガーは4人部屋一つに集まった。まるで陸上部の合宿になる。部屋から見える風車をめざして午前6時、4人で宿を出る。見渡す限りのブドウ畑が気持ちいい。走りながら旅の話をする。どこのレースに出ようか。パリは制限時間が厳しいから、ロンドンやベルリン、ニューヨークはどうだろう。仏ボルドーのメドックマラソンは、給水ポイントにワインがあるらしい。ミサオさんは長崎・五島のハーフマラソンに申し込んでいるという。えっいいな…。

 走り終えると小鳥のさえずるテラスで朝食が待っていた。民宿のマダム・フレデリックに報告する。あきれたように言われた。「何というマラトニエンヌ(マラソンランナー)たちなの!」

 ごもっとも。なにせ毎晩、日付がかわっても地元産ロゼを片手に食べ続け、翌朝5時半には起きる。1時間ほど走れば「夜の大食いは帳消し」とばかり、自家製プリンを奪い合って食べているのだから。

 帰国して3日後、大阪城を走った。1人3キロずつ男女混合4人で走る駅伝に参加した。お遊び半分だろうと思っていた。とんでもなかった。「○○大学陸上部」「△△大マラソン愛好会」…。スタートラインに並ぶのは、カモシカの脚をした短パン姿ばかりだった。うわー、どうしよう。運動オンチ小学生だったころの劣等感がよみがえる。

 ドキドキしてタスキを受けた。たった3キロだけれど時差ボケの身にはきつい。最初を飛ばしてしまい、後半1キロが長かった。どこにいるの。迷い犬のようにアンカーの姿を必死で探す。まだまだ修業が足らないな。

 旅は終わらない。ミサオさんにならい、8月末の「五島列島夕やけマラソン」に申し込む。チーム名はちゃっかり「マラトニエンヌ」にした。私にとってハーフ初挑戦になる。21キロも走れるんだろうか。おまけに五島の民宿やホテル10軒以上に電話をしたが満室だった。

 まぁいっか。ラン友は4人いる。いざとなったら浜辺で飲み明かしても楽しそう。ゴールでは五島牛のバーベキューがふるまわれるらしい。目がくらむ。走りは自信ゼロだが食べるほうならドンとこい。何しに行くんだか…。

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