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2009年8月3日                                                筆者 多田千香子

写真スーツケースいっぱいの京都土産

写真インド初日の料理。バターチキンとナン

写真グラーブジャームン。甘い

写真春雨添えアイス。不思議な食感

写真最後に出されたお口直しのアニスシードと氷砂糖。アニスでさっぱり。=いずれもインド・デリー郊外

 雨の京都から伊丹~成田を経由して機上の人になった。徹夜明けのフライト7時間半はあっというまだった。アナウンスに起こされる。もう着くんだ。「現在のデリーの気温は摂氏36度ですが、日中は40度になります。夏バテにご注意を…」。40度は英訳されなかった。隣のメキシコ人マダムに教えたら「オウ…」と言って胸で十字を切っていた。

 インディラ・ガンジー空港から外に出る。モンワリした空気がお布団みたいに体をくるむ。京都のまとわりつく蒸し暑さとも、南フランスのジリジリとした太陽とも違うな。

 インドに来た。10年ぶり3度目になる。バミューダに住むミノリさんが半年前にくれたメールがきっかけだった。夫アキチャンのソウル駐在時代の仲間スギサマが、デリーに赴任したという。おいしいもの好きの彼は農園を訪ねたり、カレー教室を探したり意欲的らしい。「いつかはインド、いかがですか」。ミノリさんの言葉に飛びついた。「行きたい行きたい行きたいっ」。阪急梅田駅のホームで本当に3回、叫んでしまった。

 ちょうどレシピ本撮影のため毎日、甘いものばかりのころ。試作と試食の反動で辛いカレーばかり食べていた。「いつ行かれますか?ぜひご一緒したいです」。すぐ返事を書いた。カレー愛は暴走したまま止まらない。かといって鼻息が荒いだけで何もせず、スギサマとミノリさんが8月決行に向けて動いてくれた。

 出発3日前に届いたエクセルの日程表にひっくり返った。タージマハール見学にインド料理教室やヨガ教室まで毎日、予定がびっしりだった。旅行会社顔負けだ。いいんだろうか、こんなに甘えて。一家団らんに乱入して。ずうずうしいにもほどがあるぞ、私。

 せめてお土産はとっておきのものを。たいていのものは手に入るだろうから京都の老舗づくしにしよう。創業110年の和菓子「末富」の懐中しるこ。大極殿のカステイラ。300年になる俵屋旅館の茶菓子セットに、540年の尾張屋のにしんそば、「とらや」の水ようかん…。錦市場で買った漬物や若鮎の甘露煮、鯖寿司もひそませた。ミノリさんから手作り菓子のリクエストもあったのに、もたもたして作れそうにない。せめては抹茶マドレーヌでも。夜ふけに20個焼いてラッピングした。スーツケースは23キロになった。

 デリーで京都物産展が開けそうなほど買い込んだつもりだったが、ミノリさん夫妻の差し入れにはかないっこなかった。かばん9個から食材が出るわ出るわ。日本酒に食パン、おかき…。すごい。海外駐在が長いだけある。何が恋しいか分かるんだな。

 空港に夕方に着いてすぐ、郊外にあるレストランに連れて行ってもらった。まずは定番を攻めよう。バターチキンはトマト味がするカレーだった。まったりとして、スパイシーでナンがすすむったらない。チキン入りカレーはスパイスの輪郭が舌の上でくっきり浮かぶ。レンズ豆のカレーは穏やかで、おふくろの味のようなやさしい辛さだった。

 デザートは2種類選んでくれた。まずアイス「クルフィー」。ピスタチオと練乳の香りがする。さじですくおうとしたら、スギサマに制された。「この春雨みたいなのを添えて食べるんですよ」。フォークで皿によそってくれた。本当だ、マロニーちゃん、なぜ君がここに。とけたアイスをからめて食べるんだろうか。なんだか不思議な感じがした。

 もう一つは「グラーブジャームン」だった。ソーセージ大のカステラが透き通ったシロップに浮かんでいる。どれどれ。あまーい。でも上品な口どけだった。私は好きかも。フランス菓子のサヴァランみたい。食べきった。

 店を出ると揚げ菓子プーリーの屋台があった。おいしそう。おなかいっぱいなのにときめく。食べてみたいな。「旅の終わるころに挑戦してみたら?」アキチャンに言われた。それはそうだ。ただでさえコバンザメ旅行なのに、途中で体調を崩して迷惑をかけたら大変だ、だめだめ。言い聞かせるが気持ちは揺らぐ。噛んで飲み込まなければ大丈夫かな…。

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