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2009年10月13日                                        ライター・さかせがわ猫丸

写真シアター・ドラマシティ公演「コインブラ物語」より=撮影・岸隆子

 宝塚星組公演「コインブラ物語」が10月13日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで初日を迎えました。ポルトガル王家最大の悲劇といわれる「ペデロとイネスの物語」を題材にした作品で、主役を務めるのは専科の轟悠(とどろき・ゆう)さん。王家の華やかなコスチュームものは宝塚の真骨頂ですので、王子ペドロを演じるベテラン轟さんには、その真髄をたっぷりと見せていただけそうです。そして今回、相手役のイネスを演じる蒼乃夕妃(あおの・ゆき)さんは、次期月組トップ娘役に就任が決定していますので、こちらも注目が高まります。

 大航海時代のポルトガル。にしき愛(にしき・あい)さん演じるアルフォンゾ国王の即位20周年を祝う日、ペドロ王子は王妃の侍女・イネスを見染め、恋の炎を燃え上がらせた2人は、「愛の泉」で誓いの口づけをかわします。ところがアルフォンゾ国王は、ペドロ王子と隣国カストロ国王の娘コンスタンサとの政略結婚を一方的に決めてしまいます。コンスタンサもまた、涼紫央(すずみ・しお)さん演じる近衛隊長ビメンタという想い人がいましたが、国同士の決定は絶対です。さらに事情を知らない王妃が、イネスをコンスタンサの侍女に選んでしまいました。婚礼の日、奇しくも引き裂かれた2組の恋人たちが顔を合わせることになり…。

 轟さんはさすがの貫録で、ペドロの年齢設定25歳にはやや落ちついていたような気もしますが、ギリシャ彫刻のような端正なマスクが王子様そのものでした。衣装の着こなしから深い演技力、戦いに臨む立ち回りにも隙がなく、若いジェンヌさんたちのお手本になっているのがよくわかります。

 蒼乃さんも可憐な侍女を初々しく演じつつ、実は今回2役もこなしています。盗賊団「黒い風」の頭アントニオの妹ミランダという役なのですが、こちらは男勝りの勝気な女性だったため、ある重要な事件が起こるまで2役とは気付かないほどでした。

 涼さんは誠実なビメンタ役がぴったりで、女性を包み込むようなラブシーンが上手です。なんだか涼さんってそんな役が多い気がしませんか? 星組の若手イケメンたちも大活躍です。夢乃聖夏(ゆめの・せいか)さんはいつものように熱い演技で頼りになるし、真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんは事件のキーを握る役に。これまで線の細い2枚目役が多かった紅ゆずる(くれない・ゆずる)さんも今回、男くさい盗賊の頭アントニオを豪快に演じていて、みなさん成長著しい! 芝居のあとのショーでも3人がメインで踊るシーンはダイナミックで、カッコいいわ美しいわで非常に眼福でした。

 舞台の上には本物の水が流れる「愛の泉」のセットがあり、涼しげな水音にも癒されて、物語は悲劇なのですが、宝塚らしいドラマチックなラブロマンスに仕上がっているため、切なくもうっとりさせてもらえます。豪華な衣装と美しい展開に、「宝塚を観た」という満足感にも浸れますから、初めて観劇する人にもぴったりではないでしょうか。

 爽快なショーで締めくくられているため、帰り道には、盗賊団「黒い風」の陽気なテーマソングを、思わず口ずさんでしまうかもしれませんよ!

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【公演案内】 コインブラ物語 作/小林公平 監修・演出/酒井澄夫 〈梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ〉:10月13日~10月25日(詳しくは梅田芸術劇場公演案内へ

筆者プロフィール

さかせがわ猫丸
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。
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