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2009年10月23日                                    中本千晶

写真全国ツアー公演「再会」「ソウル・オブ・シバ」より=(C)宝塚歌劇団

写真全国ツアー公演「再会」「ソウル・オブ・シバ」より=(C)宝塚歌劇団

写真全国ツアー公演「再会」「ソウル・オブ・シバ」より=(C)宝塚歌劇団

 タカラヅカというところは新作主義で、再演されるのは「ベルばら」など数が限られている。しかも、そのほとんどが「悲劇」である。ところが、現在星組が全国ツアーで上演中の「再会」は、珍しく「コメディー」の再演物だ。

 スター主義のタカラヅカでは、「笑い」もまた、往々にして演じる役者のキャラに負うところが大きい。だが、1999年、2002年に続く3度目の再演となるこの作品の場合、「お約束」の場面が目白押しである。その場面が近づくと、リピーターの観客は「来た来た来た~」と準備OK、わかっているのに笑ってしまう。それは、お笑いタレントの定番芸をみて笑うときの感覚に近いかもしれない。

 物語の舞台はヨーロッパの小国モナコ。主人公のジェラール(柚希礼音)は一流ホテルの御曹司でありながら小説家を志し、アメリカで遊び暮らしている。業を煮やした父親が、ジェラールが跡継ぎとして相応しいかどうかのテストをすると言い出す。テストに合格しなければ全財産は弟に譲るというのだ。

 そのテストは、「指定した女性を口説いて、一夜をともにし、捨てろ。そして、そのいきさつを小説に書いて欲しい」というものだった。お安い御用と二つ返事のジェラール。

 ところが、その女性というのが何と、モジャモジャの三つ編み頭に黒ぶちの牛乳瓶の底のようなメガネ、手には「腕ぬき」、がに股で直角歩行をする堅物な図書館職員、サンドリーヌ(夢咲ねね)だった! これには、さすがのジェラールもたじたじ…。

 普段は清く正しく美しいヒロインしか演じないタカラヅカのトップ娘役が、ここまで型破りにコミカルな芝居をやってくれるとは! このサンドリーヌとジェラールが図書館で出会う場面が、この作品一番の見どころといってよい。

 そして、ジェラールの「テスト」をサポートする男友だちが、出版社編集者のマークと演劇プロデューサーのスティーヴ。この悪友(?)2人組を今回の再演では、凰稀かなめと彩海早矢の同期コンビがチームワーク良く見せる。

 こうして、父親の冗談のようなたくらみからスタートした恋のさやあてが、やがて本物の恋に変わっていき、プレイボーイを気取っていたジェラールも…。そして、ラストシーンでは思いがけないどんでん返しが待っている。

 主人公ジェラールを演じる柚希礼音は、初舞台が初演の「再会」だったそう。これまでは重厚なコスチューム物が多かったという柚希が、彼女自身にとっても思い出深いこの作品で、関西人のDNAを呼び覚まし、コメディエンヌの一面をとこまで発揮してくれるか。

 思えばこの作品、生まれ自体も「ひょうたんから駒」だった。1999年の初演当時は、同時に上演されたのが、ショーの名作中の名作「ノバ・ボサ・ノバ」。このため、当初は「ノバ・ボサ・ノバ」のほうがもっぱら注目を集めていたのだ。

 「再会」は言葉は悪いが「ついで」というか何というか、かすんだ存在だった。ところが、初日の幕が開いたとたんに「意外と面白い!」と評判に。それにしても、こんなに何度も再演されるような「コメディーの定番」に育つとは…思ってもみなかったことだった。

 やはり「笑い」が生まれるには、どこか余裕というか、ふっと肩の力の抜けたところが必要なのかもしれない。この作品をみていると、そんなことも考えさせられるのである。

 同時上演のショー「ソウル・オブ・シバ」も2005年の初演、韓国公演、全国ツアーに続く4度目の再演だ。ダンスを志す若者の成長と栄光、そして挫折を描いたストーリー仕立ての一作で、宝塚きってのダンサー柚希の本領発揮といったところ。

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