close

2009年7月7日                                                  筆者 京橋玉次郎

写真  

写真  

写真  

写真  

 

ささやかな幸せ

 

 至福、と表現するといささか大げさだが、日常のささやかな事々で心休まる幸せな時というものがある。大仰なことではない。ほんの些細なことでいい。帰りがけのビールの1缶。眼の覚めるような緑にハッとした瞬間。そよ風に舞う桜の花びらに包まれたとき。晴れた夕暮れに富士山が見えたとき・・・。持続する時間でもいいし瞬間でもいい。

 昼飯の帰りに時々立ち寄って飲むお気に入りの1杯のコーヒーもその一つだ。ランチ帰りにいろんなところに立ち寄ってみたが、最近は1箇所に限られてきた。ここニコスのオリジナルのブレンドコーヒー、苦すぎもせず濃すぎもせず、かといって水っぽくもなくコクがある。

 

好奇心の虫動く

 

 ブラジルをベースに7~8種類の豆をブレンドしているという。こうした嗜好品の味を説明するのは難しい。どんな言葉を使っても、言葉にした時点でなんだかそれとは違っているような気がしてくる。確かなのは、ここのコーヒーは私の味覚に直球ストライクということだ。

 この店に入るきっかけは、「宮内庁御用達」という言葉だった。宮内庁御用達がすべて自分の好みに合うかどうかは別な話だが、好奇心の虫は抑えきれずに入ってみた。宮内庁のどこで使っているのかは知らないが、少なくともある種のパーティーなどで使っているとか。店の歴史を聞けば創業は昭和12年、昭和16年に陸海軍御用達となり、昭和27年宮内庁御用達となったという。この珈琲ショップを開いたのは平成8年。

 

ほとんどおじさん、まれに女性

 

 テーブル、カウンターあわせてざっと30人。朝8時から夕方5時30分までの営業だが、客足は途絶えない。いつもおじさんが一杯だ。でも時々おばさんや若い女性も散在している。ただ最近では珍しく全席喫煙可だ。嫌煙派は敬遠したほうが良いが、喫煙しながら気に入ったコーヒーをゆっくり飲みたいという向きにはおあつらえだ。

 セットも一定の人気があり、トーストやクロワッサンに飲み物がついて350円のモーニングが気に入っているおやじも私の周辺にいる。ランチはバーガーやピザトーストなどのセットで550円から650円。豆の販売やテイクアウトも評判でホット160円、アイス170円。

 

身の丈

 

 カウンターの向こうにいつもいる髭のマスターは、一人で朝から夕刻まですべてをこなしている。少し投げやりそうなポーズでコーヒーを淹れ、コップを洗い、サンドイッチを作る。投げやりそうだが手と身のこなしは無駄がなくすばやい。いつも無愛想で不機嫌そうな顔だが、ひょいと目が合った拍子にはにかんだような笑顔を見せたりもする。そんな職人風の光景を眺めるのも悪くない。

 といったコーヒー1杯のささやかな幸福感のひととき。本来ならもっと心の底からの、文字通り魂が震えるような至福のときが欲しくもある。しかし、それが得られるか得られないかも人の天分による。凡庸なる人間は凡庸なりに、幸福も不幸も身の丈にあった相応のそれで納得してゆくことになるのだろう。

arrow
arrow
    全站熱搜

    rjivoe 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()