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2009年7月28日                                         筆者 京橋玉次郎

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洋食屋の名がぴったり

 

 外見も内部も店名通り煉瓦があしらってある。煉瓦といえば東京駅や碓氷峠のめがね橋にみるように、日本が洋風化されてゆくシンボル。この店で使われている煉瓦が東京駅と同じ深谷産かどうかは知らないが、入り口の上方にあしらってある文明開化風俗の影絵とあわせ、いかにも洋食屋という言葉がぴったりする。いまや死語になった「ハイカラ」などという単語も似つかわしい。この味この雰囲気、食堂でもないしレストランでもない、洋食屋だ。

 いわゆる盛り場でなく、少々わかりにくい地味な裏通りにある店であるからして、あてもなく歩いていて目に留まったから入るという客は少ない。「今日はここ」と狙い定めた常連客がほとんどだが、最近は世にあふれる種々の情報を元に尋ねる客も多い。

 

ソースに特徴

 

 たとえばこの日も、ランチの終了間際におずおずと扉を開けた若い女性二人。テレビで知って千葉と横浜から示し合わせて来たとか。メニューを出されると逡巡することなくオムライスを注文していた。すでに注文を決めて来店した気配だ。店では常連客が飽きないようにと日替わりランチは週に3回メニューを変えている。

 本日食した日替わりランチ950円は、デミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグと2個のカニのクリームコロッケ。ハンバーグ自体は特に特徴があるとも思えないが、ほとんど黒色に近いソースが特徴的に濃厚、人によっては濃過ぎると感ずるかもしれないが、これはこれでご飯と良くあう。熱々のコロッケはカリッとした衣の内部は、トロリととろけ出すような鮮やかなクリーム、口に含めばカニの香りがフワリと広がる。店の自慢はシチューやハヤシなど、ソースを使った料理だという。

 

名物おやじの姿がない

 

 この店を訪れるのは久しぶりだ。タオルで鉢巻をした70余歳の屈強なおやじさんが大きな片手鍋をヒラリヒラリとひるがえすのを眺めるのが頼もしくも面白かった。が、フロアを目配りする女将に聞けば、おやじさん一昨年暮身体不調で引退、今は次男が厨房を切り盛りしているという。少々寂しいが時が経つというものはそういうことなのだろう。

 引退したおやじさんは日比谷高校でラグビーに熱中、文京区にある某国立大学に進んで新聞記者になるのが夢だったが失敗、母子家庭ゆえいつまでも浪人しているわけにはゆかなかったという。銀座でキャバレーをしている友人の口利きで3丁目煉瓦亭ののれんをわけてもらったのがこの店の始まり。

 

3軒の煉瓦亭

 

 煉瓦亭と称する洋食屋は界隈に3軒ある。その3軒の関係を少し乱暴に整理すると、3丁目店が文字通りの本家本元で新富町店が子、1丁目店が孫にあたる。タオル鉢巻のおやじさんが3丁目店からのれんわけしてもらい新富町に店を構えたのが昭和38年、その3年後に新富店からのれんわけして1丁目店が誕生した。現在は新富町店を次男、1丁目店を長男が経営している。

 カウンター10席、テーブル20席というこじんまりした店内。客の席からキッチンが見渡せ、キッチンからも客席が見渡せる。近すぎもせず遠すぎもしないこのほど良い距離が、特有のやや家庭的な雰囲気を漂わせる一因かもしれない。

 

【お店データ】

煉瓦亭新富本店

東京都中央区新富1—5—5−104〈地図〉 03−3551−3218

営業:〔平日〕午前11時30分~午後2時、午後5時~午後8時30分、〔土曜〕午前11時30分~午後2時、日祝休み

<本日食したランチ>

日替わりランチ 950円

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