2009年2月9日 東京都文京区「魚沼厨房 れとろ亭」
藻塩の塩角煮
とんかつ定食
妻有ポークのしゃぶしゃぶ肉
しゃぶしゃぶをしてみせる店主の江川太郎さん
のっぺ汁
「魚沼厨房 れとろ亭」
初めてご飯を炊いた、あの日。炊飯器から「もわ~っ」とたちのぼる香り、湯気の奥のもっちりとした輝き。ああ、いつかは、魚沼産の最高級コシヒカリを、いや、どうせなら、おかずも丸ごと新潟尽くしでキメたいものだ、と思った。その夢がついに……。(アサヒ・コム編集部 宮崎陽介)
■“門外不出”のブタが目玉
「昼から魚沼コシヒカリは、ちと、ぜいたくですが、家庭の味には癒やされました」。知人の40代前半の女性から寄せられた声に、ビビと、味覚の針がふれた。
お目当ての店は「魚沼厨房 れとろ亭」。そのものズバリの屋号である。
店主の江川太郎さん(39)によると、おそらく東京都内で唯一、お客さんに出しているという「妻有(つまり)ポーク」が最大のウリ。この豚は、十日町と津南町にまたがる妻有地方で、超厳重な防疫態勢で管理、飼育されるため、抗生物質を使っていないという。豪雪地帯は、人も菌も寄せ付けないのか。現地では「地産地消」をうたう“門外不出”のレアものだ。
さて、味は? 自分の舌に問うてみよう。
まずは「藻塩の塩角煮」。海藻ホンダワラに海水をかけて乾燥させた塩。口にふくむと一瞬、甘い。コクもキレもある。しかも、トゲトゲしくない。濃い口の角煮に慣れた舌には、このあっさり味は新鮮だ。
おはしで縦にズブリと刺しても、みじんも身崩れせず、ススッとおはしが通り、サックリと割れる。器にたまった汁も逸品。焼き肉店でお目にかかるテールスープより、コクと塩味を利かした感じ。ご飯にかけてみたい。
さて、この日のメーンディッシュは定番、ロースのとんかつ定食だ。脂身はやっぱり軟らかい。赤身部分は、鶏のささみに近い感じ、つまり、もっちりしていて、身がキュッとしまっていて、味は雑味がなくて透明感さえある。江川さんによると、抗生物質を使わない豚は、えぐみが少ないのだそうだ。先ほどの「藻塩」で食べるのがオツ。肉やころもの風味が引き立つ。
■日本酒しゃぶしゃぶ、のっぺ汁
ニュースが一つ。
この豚を使った「しゃぶしゃぶランチ」を、日曜・祝日限定で始めた。バラとロース150グラムずつの2人前から。カツオとコンブで取っただし汁の中に、地元新潟の特別純米酒「松乃井」を升1合入れる。もちろん、火を入れるとアルコールは飛ぶが、淡麗でまろやかな口あたり。
このだし汁に、サッとくぐらせたお肉は、口に入れると、すぐに溶けてしまいそうなぐらい。聞けば、妻有ポークの脂身の融点は、他より低いのだそうだ。先の藻塩をちょんとつけて食べるもよし、ごまだれで食べるもよし。記者のオススメは、南蛮塩辛(なんばんじょうから)で。これ、「唐辛子とピーマンが合わさったようなもの」(江川さん)という夏野菜「カグラナンバン」に生麹と塩を加えて寝かしたもの。この南蛮塩辛、ピリリとした辛みの中に、麹の香りが漂う。「かんずり」を思い浮かべるといい。静岡のわさび漬けのように、ご飯にのせたら最高だろう。
ちなみに、このしゃぶしゃぶは、夜の営業ではすでに出している。夜だと、最後の雑炊には、待ってました!の魚沼コシヒカリ、それも最高級、十日町市の木落(きおとし)地区のコシヒカリを使ってくれるのだ。
最後に、新潟といえばコレ、のっぺ汁だ。これまで紹介した料理を含め、店で出すメニューは、江川さんの母、正子さん(65)のおふくろの味。その味わいが最もにじみ出ているのが、のっぺ汁だ。
十人十色、百人百様、千差万別、家庭によって、味も具材も違う。が、サトイモだけはマスト・アイテム。ぬめりを生かす家庭も多いが、正子さん流は、ぬめりを取って、素材の味を生かした、さらりとした味わい。見た目も味も、みずみずしい。
お店情報
- ■メニュー
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串カツ定食 850円
ぶた丼 800円
しょうが焼き定食 1050円
とんかつ定食 1200円
しゃぶしゃぶランチ(日・祝) 1500円
- ■住所
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東京都文京区水道2の7の5、井口ビル1階、土曜定休。
電話03・6666・5695
【姉妹店】「神楽坂 和菜れとろ」(03・3269・6906)
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