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2009年8月25日                             筆者 京橋玉次郎

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焼き具合がいい

 

 注文を受けて板さんがサバの切り身を網に載せレンジに入れる。待つこと数分、網を少しだけそっと引き出してのぞく。「お、来るかな!」。と思ったらすぐに戻す。しばらくして再び同じ動作を繰り返した。微妙な焼き上がり具合を慎重に見計らっているらしい。焼きあがったサバを網から皿に菜箸で移す。サラッ、サラッ、と網から水のような脂がしたたっているのが見える。

 サバはやわらかく脂が乗っていて、いかにも旨い。魚自体が良かったのだろうが焼具合とも無縁ではなそうだ。付いてくるのは木綿豆腐の冷奴、漬物、味噌汁代わりのアラ煮。それぞれがごく普通の材料だが手抜きされることなく調理されている。ランチは本日食した焼き魚定食が850円のほか、弁当1050円、うなぎ柳川定食1050円とある。この味でこの価格はなかなかだ。本来は関西風味付けの料理が自慢。夜は1品料理のほか6000円から12000円のコースがある。

 

虚子の命名

 

 丹波といえば栗か黒豆、あるいは酒天童子か。その丹波に西山酒造という150年以上続く酒蔵があるという。この店はその酒蔵の直営店で東京へ出店して33年になる。店名の「小鼓」という名称は西山酒造のブランド名。そのしゃれた呼称は俳人高浜虚子の命名だそうで、同酒造の三代目が趣味人で虚子の弟子だったと聞く。壁に「ここに美酒あり 名づけて小鼓という」と書かれた色紙が表装して掛かっている。読み難い文字だが虚子と読め、落款もある。

 そういえば店も酒肆(しゅし)・小鼓となっている。本屋など今でも書店といわず書肆(しょし)と名乗るところがある。酒肆と名づけるあたり、いかにも文人のにおいがする。ちなみにデパートや酒屋に卸していないため、小鼓の純米吟醸や生酒が飲めるのは東京ではここだけだそうだ。

 

職人の手元

 

 銀座の昭和通りに面している。店内はこじんまりしていてカウンター9人、こあがりの座敷6人という広さ。兵庫生まれという太っ腹そうな女将さんと板さんの二人でやっている。買い物客がぶらぶらする通りでもないから、客のほとんどは常連。BGMもなく、声高にしゃべる人もない。静かだ。ただ、この空気は一見の人には敷居が高いと感ずるかもしれない。

 さて、連れがあるときは別だが、一人で料理を待つときはどうするか。店のテレビを見る、新聞を読む、持参の文庫本を読む、などいろいろあるだろうが、私は板前の手元を見ているのが好きだ。魚ばかりでなく鮨でもてんぷらでも同じこと。もっといえば大工でも建具屋でも洋服屋でも何でもそうだ。熟練の職人の身のこなしというのは見ていて飽きない。生まれ変わったら何をしたいと聞かれれば、何かものを作る職人になってみたい気がする。

 

【お店データ】

酒肆・小鼓

東京都中央区銀座1-20-17〈地図〉 03-3561-5233

営業:〔平日〕午前11時~午後1時30分、午後5時~午後10時

土日祝休み

<本日食したランチ>

サバの塩焼き定食 850円

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